売り上がった金額を請求する。いたってシンプルな考え方なのですが、これが意外と難しいのです。
顧客マスタとして一元管理しない場合
顧客を一元管理しない場合には、顧客マスタを持たずに、請求先の住所や氏名は請求書データに保持します。この場合は、同じ人が複数回取引(売上)を行った場合には、同じ住所・氏名の請求書データが保存されていることになります。売上高は管理できますが、顧客分析ができなくなります。
顧客マスタで一元管理する場合
初回の取引で、新規に顧客マスタに登録します。相手が企業であれば与信を行うなど、顧客マスタの登録にはいくつかのステップが存在します。相手が個人であると、同姓同名の場合もあるので、識別できる情報を付加して顧客マスタに登録することになります。
顧客マスタに登録した後に、売上データを登録し、その後、請求書データを作成する流れになります。この場合には、売上データをシステムに登録する前に、顧客マスタに登録する必要がありますので、業務の流れに縛りが発生し、煩雑にもなります。よって、いきなり売上のケースでは、顧客マスタの設置は難しいのです。
以下は、顧客マスタで一元管理する場合になります。
締め請求
「月末締めで、翌月月初に請求書を発行し、月末に入金」といったケースです。
7月10日に売上が10万円、7月20日に売上が20万円発生したとします。7月の売上合計が30万円ですので、翌月の8月に30万円の請求書を発行し、8月末までに入金して頂くといった流れになります。
ここまでは単純なのですが、取引先毎に締め日が異なったらどうでしょうか。A社は月末締めで、B社は20日締め、といったことがあるのです。しかも、入金して頂く支払期日も、A社は締め日の翌月末、B社は締め日の翌々月末となると、会社ごとに、締め日と支払期日が異なるのです。極端なことを言うと、毎日どこかの取引先が締め日で処理をすることになります。しかし、通常は「ごとうび」(五十日)が基本で、毎月の5日、10日、15日、20日、25日を締め日としています。なお、30日を締め日とする指定はなく、「月末」として扱う場合が多いです。
支払期日も「当月」「翌月末」「翌々月末」など指定することになります。これを支払サイトを呼んでます。
クラウド型販売管理では、取引先マスタに設定された締め日や支払サイトを判定しながら、締め請求の処理を行うことになります。
前払いの請求書
手付金などがこれで、100万円の商品を販売する前に、手付金として20万円を請求する場合です。まだ商品を出荷していないので、20万円の売上が立っていない状態で請求するのです。単純に20万円の請求書を印刷すれば良い?と考えますが、売上情報をもとに請求書を作成するロジックになっているクラウド型販売管理やクラウド会計ではこれができないのです。特に最近はクラウド会計で請求書を発行できるようになっておりますが、前払いについては、仮の売上データを登録するなどの工夫が必要になるのです。
さらに、商品を出荷し売上が確定し、その後、請求書を発行する際には注意が必要です。というのは、すでに、20万円を頂いてますから80万円の請求になります。ところが、クラウド型販売管理のデータや会計上は、出荷日での売上が100万円になっておりますので、通常のロジックで請求データを作成すると、二重請求になってしまうのです。
請求書発行をシステム化するのは、かなり難しいことが、ご理解頂けますでしょうか。
そして、さらに難しさの話は続きます。
支社からの受注を本社に請求
全国に支社が存在する取引先企業の場合、支社から受注し、支社に出荷納品するケースがあります。取引先企業のご希望に応じて、支社への請求を本社にまとめて請求して欲しいというご要望を頂くこともあります。この場合、取引先マスタに親子関係を持たせる必要があります。本社を親、支社を子にして、子の売上を親に請求するという機能です。
売上をそのまま取引先に請求するのではなく、請求先が別途指定できるということです。
未払いを合算して請求
前回まで請求した金額で、未払いがある場合に、未払い金額を今回の請求に合算するケースです。これは、前回の請求タイミングから今回の請求タイミングの間に、支払(決済)が必ず存在する場合です。分かり易いのがクレジットカードや口座振替です。前回の請求金額が未払いになったことが確実に把握できることが前提になるのです。ですので、振込みでは合算請求は難しいものになります。取引先の担当者と事前に連絡して合意している場合は、合算請求できますが、運用が手間になりますし、混乱のもとになります。
未払いを合算するのは、かなり難しい業務になりますので、月毎に請求して、請求書の単位に未払いの対応(入金フォローなど)を行うのが良いでしょう。